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株式会社メルカリを退職しました

はじめに

2019年9月30日に最終出社をし、株式会社メルカリを退職しました。

これは退職者 Advent Calendar 2019 最終日の記事になります。

目次

$ whoami

xR系のエンジニアです(xRとはAR/VRの総称)。2017年4月に株式会社サイバーエージェントへ入社し、VR AgentというVR関連事業を行う子会社でAbema TV VRの開発リーダーを務めました。プロダクトのリリース後に退職し、2018年10月に株式会社メルカリへ入社しました。業務以外では個人でのゲーム開発(千本桜/Bat.io)を始め、VRアバター時代のアダルトアプリを作ったり、開発者向け勉強会の主宰をしていたり、YouTuberをしてます。

www.youtube.com

詳しい経歴等はポートフォリオを参照いただければと思います。

nkjzm.github.io

メルカリについて

株式会社メルカリではxR領域に関するR&D業務をしていました。入社2ヶ月後に書いた入社エントリでも書きましたが、すごく自由で伸び伸びと課題に取り組める環境だったと思います。また、AWE USA 2019での海外出展など貴重な経験をすることも出来ました。

kohki.hatenablog.jp

給与水準も高く、退職時の年収は800万円強でした。実際はボーナスがRSUという形で付与されるため、手取りとしては一段低くなります。そのほかにもフレックス制度やSick Leaveの導入*1 など、待遇面も申し分なかったです。

退職に至った経緯

チームの状況に変化があったためです。

note.com

この決定を受けて、正直なところxRで事業を行うことの難しさを感じました。 実は前職でVR事業を行っていた子会社も解散しています*2。xR領域では数年以内に大きな利益を生み出しづらい市場の状況からこうした判断になることは仕方ないと思いますが*3、1年間の活動を通してxRの将来性を示せなかったことが本当に悔しかったです。会社に残る選択肢もあったのですが、自分が熱意を持って取り組めることをしていきたいと思い退職を決めました。

次の会社について

2020年1月からはMyDearest株式会社でお世話になります。VRミステリーアドベンチャーゲーム『東京クロノス』を作っている会社です。

tokyochronos.com

次回作の『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』が発表されており、こちらの開発に加わる形です。先にも述べたようにxR領域の事業に対する懸念は強くありましたが、転職活動を通じて最終的にはもう一度挑戦してみたいという気持ちになりました。

コミットメントシフト

さて、今回は9末に最終出社をしてから入社までに約3ヶ月の空白期間があったのですが、実は「コミットメントシフト」という考え方を参考に転職活動を進めていました。

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出典: 「転職」が無くなる時。“コミットメント・シフト”の時代。 古屋星斗|研究所員の鳥瞰虫瞰 Vol.3|リクルートワークス研究所

これはコミットメント(稼働)の比率をシフトさせていくという概念です。従来の「A社100% → B社100%」と切り替わる転職でなく、段階的に推移していくことを指します。複数社の社会人インターンを経て最終的な移行先(転職先)を決めるというイメージでしょうか。これには双方のメリットがあり、従業員側が転職先のことをイメージできますし、会社側は実際の仕事のパフォーマンスを知ることができます*4。受け入れに際する諸々のコストはありますが、非常に合理的な転職のカタチであると感じました。

実際には、このような変遷を辿りました。

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コミットメント比率の推移

8月までは「メルカリ+元々副業として働いていたA社(リモート)」のみでしたが、退職を決めた9月以降は有給消化を活用して徐々に稼働の移行を進めました。転職活動を通じて気になる会社を4社まで絞り、内3社では期間限定で週2稼働の業務委託として受け入れていただきました。移行期間を経て色々と思案し、12月下旬頃MyDearestに正式ジョインしたい旨をお伝えしました。まだ引継ぎ等のやりとりをしている会社もありますが、転職としてはひと段落した形になります。

実際に働いてみて、以下のような良いことがありました。

  • 働き方のイメージが明確になる (仕事の内容、意思決定の流れ)
  • 一緒に働く人や、職場の雰囲気に触れられる (そもそも性格が合うか、など)
  • 通勤の快適さ/不便さを知れる (乗り換えが辛いと分かった)

私自身、環境が変わることに対して強い不安があるタイプなので、転職先を決める前にこうした期間をいただけてすごく有難かったです。反面、フルコミットでジョインしなければ分からないことがあるように感じました。

  • 稼働が少ないため、チーム開発における役割が局所的になる(小さな機能開発/CI整備/プロトタイピングなど)*5
  • 仕事を掛け持ちしている状態であるため、プロダクトに対するコミットの意識が薄れる(こなしているような感覚になる)

会社とのやりとりに関しては、全て小規模だったこともあり比較的相談がしやすかったです。数社で迷っている旨、実際に働いてみて転職先を決めたい旨をいずれの会社にも伝えた上で受け入れていただけたので、結果的に行かなかった会社とも良好な関係を保てているように思います。

対外発信の重要さ

今回の転職活動では、エージェントを一切使わず全てリファラル/Twitter経由で行いました。Twitterで転職する旨を投稿したところ、有難いことにいくつかの会社からご連絡をいただき、色々なお話をお伺いすることができました。面談にも色々な形があり、きちんとした説明をしてくれる会社を始め、ほぼ雑談形式だったり、開発メンバー全員を紹介してくれたり、一緒にボドゲをしたりと、特色が出ていて面白かったです。

こうした転職活動が実現できた背景として、対外発信の影響が大きかったと思います。メルカリではオープンなカルチャーを推進していて、会社に所属しながらも対外発信がしやすい環境でした。これは今年の9月頃の投稿ですが、ほぼ入社してから行ったアウトプットです。公開している記事や登壇では、業務として行ったものも数多く含まれています。

また、メルカリでは技術コミュニティに対する支援も行っていて、自由に社内外を対象とした勉強会を開催することができます。私は直近1年間で計10回以上勉強会を開催することができました。

こうした活動を通じてxR領域の開発者内では一定のプレゼンスを得られており、スムーズに転職活動が進んだように思います。前回の転職では、サイバーエージェントの「若手が大きな仕事を任せてもらえる文化」で得られた成果を上手くアピールできましたが、今回は少し違うアプローチになりました。実際、1月から働くMyDearestでは、対外的な活動を知ってくれていたエンジニアの方がきっかけでお声掛けいただいています。こうした思わぬご縁に繋がることもあるので、引き続きアウトプットは続けていきたいと感じました。

朝ちゃんと会社にこれない問題

以前こんなツイートをしたことがあります。

これは前々職・前職と度重なる遅刻により給与査定に影響していた自身の状況を揶揄した投稿です。今まで何度も改善を試みましたが、どれだけ早く寝ても起きられない時は起きられないことを悟り諦めていた経緯があります。そこで今回の転職では初めの面談時に遅刻に関する同意を取ることを心がけました。

迷っていた会社はいずれも遅刻に関して寛大で、業務委託期間中で一度も朝の定刻に行けなかった会社もあります。10分遅れて出社したら誰もいなくて、私がQrio Lock*6で解錠することもありました。多くが裁量労働の形をとっているので最終的に仕事をやり遂げられれば問題なく、非常に心理的安全性が高い状態でした。

今まで「社会人なんだから、朝起きられないとダメ」と散々言われてきました。もちろん朝きちんと定刻に出社し同期的に仕事をできる人の方が労働者としての価値が高いことは理解しています。しかし、無理に苦手なことを克服するのではなく、別のところで価値を出そうとするのも間違っていないかなと思いました。今回は自分のできないこと(朝起きる)を会社に伝えた上で、無事採用していただくことができて良かったです*7。ちなみに大事なMTGとかは頑張って起きます…!

週休3日

MyDearest株式会社では正社員として週4日勤務で入社させてもらうことになりました。以前から人生の時間を仕事だけでなく、別の自己実現のためにも使いたいと感じていて、転職のタイミングで相談してみた形になります。開発の状況やチームメンバーとの兼ね合いなど色々と懸念もありますが、しっかりとコミュニケーションをとって迷惑をかけないようにできたらと思っています。週4勤務によって生産性の向上が期待されているという話もあり、色々と模索していけたらと思っています。

最後に

前職での決定を聞いた時は『また勝てなかったぜ…』の一コマが頭をよぎりましたが、再びxR領域で挑戦することになりました。この数ヶ月の中で本当に色々なことを考えたんですが、やっぱりxRの未来を信じたい気持ちを捨て切れませんでした。MyDearestの次回作、『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』をぜひ楽しみにしていてください。

例のリストの変わりにpixivFANBOXのリンクを置いておきます。週休3日を希望した理由でもある自己実現のため、個人でのゲーム開発も引き続きやっていきたいと思っています。開発の進捗などを定期的にアップしていますので、よかったらフォローだけでも是非よろしくお願いします。

www.pixiv.net

普段はTwiterで有益情報や成果物を発信しているので、こちらも是非フォローしてくれると嬉しいです!

twitter.com

*1:病欠時に使える有給休暇とは別の休暇

*2:サイバーエージェント子会社のVR Agentが解散…VR・ARコンテンツの企画・開発、運営

*3:前職では既に大きな利益を生み出しているサービスがあったため、その比較もあった

*4:インターネット上では凄そうに見えても実際はあまり仕事ができない人もいる

*5:ただし内1社は1プロダクトのエンジニアリング全般を任せられていたため、そういったことはなかった

*6:スマートロック

*7:上手くいった一因として、同期的に業務を行う必要性の薄いエンジニアという職業の性質はある程度関係していそう